細胞医療の時代2018シリーズ

第2回「企業から見た再生医療」報告

 1月末に好調なスタートをきったシリーズ『細胞医療の時代2018』第2回は、3月7日、東京大学医科学研究所で、90名近くの方たちを迎え、企業の最前線における細胞医療の進展についてお話をうかがいました。
 セミナーに参加された皆さんからは、「ひじょうにInspiringだった」、「解決すべきシビアな問題が山積しているが、これからつくり上げていく新しい治療法だと認識した」、「ポイントを押さえてわかりやすい話だった」、「研究を進めながら、常に“出口”を念頭に実現可能な治療法や技術を提案されていくことを期待したい」など、手応えのあるご意見も届いています。

 


自家細胞を用いた再生医療産業化への挑戦
―培養表皮・培養軟骨の製品提供経験を通じて―


㈱ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング代表取締役執行役員  

畠 賢一郎氏

​【講演要旨】

・J-TEC社 1999年設立。 畠氏はもともと歯科医。
・現在、培養細胞をつかう再生医療の製品は、培養皮膚と培養軟骨に大別。
・自家培養細胞(患者自身の細胞を使用)/オーダーメード型医療は日本と欧州で主流、免疫拒絶が少ない。他家培養細胞は米国で主流、大量生産のためコストダウンが容易。趨勢としては他家細胞へ移行。

自家培養皮膚
・2007年、上市。厚生労働省への薬事承認申請から、国保承認まで、10年要する。
・再生医療製品として、わが国における第1号。ヤケド、白斑、水泡症、キズ跡の治療に有効。
・スキーム 患者皮膚採取(切手大)し、細胞をばらばらにして、フィーダー細胞(放射線によって成長を止めたマウスの細胞)にまく・。ヒトの皮膚細胞が増殖し、3週間後フィーダー細胞は消え、厚みのあるシート状になり、約4,000倍に成長。
・製造販売承認の適応症 全身の30%以上の大ヤケドに限定(参考/背中一面ヤケド:20%相当、片腕:10%)。年間提供は、100人強。
・価格 当初は1枚(8×10cm2 、全身の0.5%カバー)30万円、保険対象は20枚まで(全身の10%相当、適応症ヤケドは30%以上)。
・3週間の培養期間 患者さんの死亡により手術に至らなければ、当初は費用回収不能(現在はAキット、Bキットなどの段階制により基本費用などについては考慮される)。

自家培養軟骨
・保険診療承認までに13年かかる。再生医療製品として、わが国における第2号。
・軟骨を欠損すると、自然には治癒しない。
・モザイクプラスティ法(自家培養細胞ひざ軟骨移植法)。ひざ関節の骨部分のついた軟骨を筒状に6本程度抜く。健常軟骨組織を採取して3次元ゲルの中で細胞培養したものを、筒状部分に戻す。
・適応対象 ひざ関節における外傷性軟骨欠損症、または離断性骨軟骨炎(変形性ひざ関節症を除く)。外傷などによる欠損軟骨面積4cm2 以上の疾患に限定。年間数百例。
・軟骨培養細胞移植1年後より、3年後の方が、軟骨組織がしっかりと定着する傾向。自家細胞による再生医療の特徴である。
・患者向け、医師向け手引書を用意。また、営業社員から医師に手術方法を説明提供も行う。

 

課題 

・オーダーメード型医療ならでは、症例数の少なさによる高額費用。適応症が増えれば一般化する。

・製造における待ち時間の問題/往復の輸送、輸送容器。
・法整備などの論議/製造中の半製品、不適合上の製品は誰のものか?
・産学官+患の連携の必要性。                                                

                                          以上
(文責:NPO法人健康医療開発機構)


 

―再生医療におけるウィルスベクター
および細胞製造と品質管理―


タカラバイオ㈱CDMセンター第1部長 

糠谷育衛 氏

​【講演要旨】 【講演要旨はこちら

〈背景〉
・1967年、寶酒造㈱中央研究所設立。分社化し、2002年、タカラバイオ㈱設立。
・滋賀県草津市にて、バイオメディカルセンター(遺伝子検査など)と遺伝子・細胞プロセッシングセンター(再生医療等製品開発支援など)の両軸でバイオ産業支援事業を展開。
・再生医療等安全性確保法(2014年)により、それまで医療用の細胞加工は医療機関のみに許されていたものが、企業へのベクター(遺伝子を細胞内に運ぶ能力をもつ粒子)製造から細胞調製まで一貫した細胞加工工程の委託が可能となった。また、薬事法改正により、再生医療等製品に対する条件および期限付き承認制度が整い、早期の商業化が可能となった。


〈タカラバイオ社の取組み〉
・1990年代レトロネクチン®(フィブロネクチンという細胞の周囲に付着しているタンパク質の一部を組み替えたもの)による、遺伝子を効率的に細胞の中に導入できる方法を開発。レトロネクチン®製造施設(GMP/医薬品適正製造基準)を建設、その後ウィルスベクターの製造施設(GMP)、細胞加工施設(GMP)を建設し稼働している。


・①体内遺伝子治療(In vivo)  HF10/腫瘍溶解性ウィルス自体をがん局所に投与。
②体外遺伝子治療(Ex vivo)  TCR(T細胞受容体)遺伝子治療(遺伝子改変Tリンパ球療法の一つ)/一旦、体外に患者のTリンパ球を取り出し、がん細胞を特異的に認識するTCRの遺伝子を導入し、増やした後に、再び患者に投与。CAR(キメラ抗原受容体)遺伝子治療(遺伝子改変Tリンパ球療法の一つ)/CARは抗体の1部を使った抗原を特異的に認識できる受容体。

②の製造ではレトロネクチン®を使用。
・遺伝子導入細胞製造のためには、TCRまたはCARを発現するための遺伝子を搭載したウィルスベクターを産生するマスターセルバンク(MCB)構築→さまざまな品質試験項目で安全性を確保。
  製造工程におけるコンタミネーションの防止、取り違いの防止。
  製造工程開発における適切な製造スケール、適切な原材料・機器の設定、および労力の削減。
・遠心機を使わない遺伝子導入法/閉鎖系のガス透過性バッグを使用。  
・遺伝子治療とカルタヘナ法 治験開始までに必要に応じた第1種、第2種の大臣承認等が必要
 第1種 In vivo、Ex vivo(ウィルスの存在するもの)遺伝子治療
  (タカラバイオが手掛けるEx vivo遺伝子治療用細胞は、第1種の対象外として実施)
 第2種 ウィルスベクター、遺伝子導入細胞の製造
・遺伝子・細胞プロセッシングセンター(上述) Center for Gene and Cell Processing(CGCP)
     1階 レトロネクチン®製造 2階 ウィルスベクター製造 3階細胞加工・品質試験
  複数、多種の製品をつくるための留意点/空調の独立、廃液逆流の防止、製造室の室圧設定等によるウィルス拡散防止
・CGCP隣接地に現施設の2倍規模の新施設を2019年に稼働予定(ベクター製造/15倍、細胞加工60%増等)。 

                                             

以上