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細胞医療の時代2018シリーズ

第3回「細胞医療への期待と規制」報告

  本年1月から展開している『細胞医療の時代2018』第3回は、5月9日、東京大学医科学研究所で、80名近くの方たちを迎え、患者の立場からみた先端医療への期待と関わり、また先端医薬品等に関する行政の取組みについてお話をうかがいました。
 セミナーに参加された皆さんからは、「不治の病と思われていた病気の治療と再生医療の接点がわかった」、「再生医療製品に対するPMDAの取組みが理解できた」、「治療に役立つ新しい方法が患者に安全に早く届くことを祈っている」、「レギュラトリーサイエンスについて米国FDAなどとの連携の観点からも話が聞きたかった」などなどの感想に加え、「初めに専門家の質問が出てしまうと、一般参加者は手を挙げにくい」というご指摘もあり、今後の運営に反映させていきたいと思います。

 

脊髄損傷医療と患者の歴史 
―臨床試験に関与する患者の出現―


立命館大学大学院 先端総合学術研究科 坂井 めぐみ氏

【講演要旨】 【講演要旨はこちら

●日本における脊髄損傷に対する医療の歴史
・明治~大正期 1873年、脊柱断骨、脊髄の損傷について記述。日清、日露戦争における脊髄銃創

   →多くは戦地で死去。レントゲンで銃弾の位置特定、除去手術も。
・戦前~戦中期 1936年、初めての脊髄損傷についての博士論文執筆。
  炭鉱での脊髄損傷者、交通事故被害者も増加。
  椎弓截除術、褥瘡予防。国策を背景に『軍内治療』も。
     1937年、戦傷病者の医療体制の整備 脊髄損傷者は臨時陸軍東京第一病院で治療。
     1940年、傷痍軍人箱根療養所の開設
・1945~1970年代 1949年、労災増加,労災病院の登場。
・1964年、東京パラリンピック開催。
   起立、歩行訓練を中心に対応。病院間格差の広がり。

●日本における脊髄損傷に対する再生医療の発展
1990年代後半~、幹細胞研究の進展を受け、脊髄損傷根本治療の可能性が出現。
1996年、『特定非営利活動法人 日本せきずい基金』が活動を開始。
 再生医療研究を推進する患者団体
 研究者との協力関係の構築
 臨床試験の実施:  培養自家骨髄間質細胞移植(2003年~、関西医科大学/京都大学)
   医療者と患者側との認識の違い 
            交渉における『医療の言葉』の壁。
            安全性の確保(細胞培養におけるGMP(優良製造規範)準拠→研究計画の変更。
            被験者に伝える予測リスク 考えうる炎症の範囲。
                                                 ウィルス感染によるリスク 麻痺、知覚レベルの低下は?
                       ↓            仮に運動機能改善しても異常疼痛などに苦しむ場合あり。
           『絶対善』ではない再生、『望まれない再生』のような『中途半端な再生』
           (2004 No21 『日本せきずい基金ニュース』)
           『専門家とは異なる視点』 患者に求められる科学リテラシー。『患者の知』の重要性。
             患者にとって、『治る』とは、何か?
                       脊髄損傷者にとっての臨床試験 現在の生活との関係を考慮して決定。

●生命科学研究と患者
市民と科学者が対立を越えて連携する citizen-science alliances(Brown 2010)の時代になることを期待。

    
以上

再生医療等製品の規制とPMDAの取り組み

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA) レギュラトリーサイエンスセンター

研究支援・推進部 再生医療製品等審査部

平田 雅一 氏

​【講演要旨】 【講演要旨はこちら


●PMDAの3つの役割 
レギュラトリーサイエンス(RS)に基づき、安全で、品質のよい製品の供給の迅速化、医療水準を向上。
審査/リスクの抑制  安全/継続的リスクの最小化 救済/発生被害の救済。

●薬事改正法(薬機法、H26年11月施行)
再生医療の実用化に向け、再生医療等製品の特性を踏まえた製造・承認・販売の仕組み
→・多くの製品をより早くベッドサイドへ。
 ・条件及び期限付承認制度の導入
   均質でない再生医療等製品の特性から、有効性が推定され、安全性が確認後、
   条件及び期限付きで特別に早期に承認できる仕組みを導入。
       承認後、有効性・安全性を改めて検証/患者のアクセスをより早く!

●レギュラトリーサイエンスセンター(H30年4月発足)
科学的課題への対応強化・効率化へ  再生医療等製品の品質・有効性・安全性を科学的に評価。
  
●レギュラトリーサイエンス(RS)戦略相談
◆RS総合相談(無料) 戦略相談に向けて、一般的な内容。テクニカルエキスパート(TE)が対応。
◆RS戦略相談 
 ・事前面談(再生医療等製品事前面談、無料)TE対応。審査チームも同席して、論点整理。 
       開発面での懸念事項、疑問点を当局と共有し解決の方向へ。   
 ・対面助言(有料)必要に応じ外部専門家も同席し、科学的議論。
       品質及び安全性に関わる相談は、1回の手数料で何度でも相談可能。

●先駆けパッケージ戦略
◆先駆け審査指定制度 画期的治療法が急がれる疾病を対象。審査を加速化。
 ・革新的医薬品、再生医療等製品など、世界に先駆け日本発の早期実用化へ。
 ・承認審査までの期間短縮 ・優先相談/助言 ・事前評価の充実 ・優先審査
 ・審査パートナー制度(PMDA版コンシェルジュ) 必要工程の総括管理。
 ・製造販売後の安全対策の充実 (再審査期間の延長)

●再生医療等製品の使用について求められる医療現場での対応/患者への説明と同意
 リスクに関する知見の蓄積の少なさ、「有効性が推定レベル」の場合のエビデンス度などについての説明。 

 

以上

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