第12回理事会・総会 開催報告


人の輪を拡げよう
~さまざまな方向から、活動を充実していくために~

2017年5月30日、東京神田・学士会館で、第12回理事会につづき第12回総会が開かれました。宮野悟理事が司会をつとめ、珠玖洋理事長が議長に選任され、出席者  20名(委任状提出者43名)、2016年度の活動報告、決算案などにつづき、2017年度の活動方針・予算案が承認されました。
 

2016年度は多彩なテーマで7回の健康医療ネットワークセミナーを開催し、また3月に行った第10回シンポジウム『認知症と向き合う~すこやかに老いるために~』には、400人に及ぶ方々に参加いただきました。
2017年度においても、健康医療ネットワークセミナーなどを活発に展開しており、新しい「仲間づくり」を念頭にいっそう多様な活動を目指してまいります。

 

総会の後、環境省の中井徳太郎氏により講演が行われました。


「つなげよう、支えよう森里川海」プロジェクト
~自然の恵みで豊かなくらしへ~ 今後の展開について

 

環境省 総合環境政策統括官
  中井 徳太郎 氏


【講演概要】 ※講演資料はこちら 

アンバランスな環境
 野や山に雪がつもり、雨が降り、川となり、また地下水となって海に流れる。海からの水蒸気が雲になる。この水の循環系の中で、生きとし生けるものの暮らしが支えられています。循環共生系のサイクルが健全であれば問題ないが、われわれを取り巻く環境のバランスが近年とみに崩れてきました。


 私の母は群馬県上野村の出身ですが、戦後の高度成長期、農村、山村、地方から都会に人々が集まり、私たちの生活を支える仕組みが大きな変化を遂げ、いびつな事象が起きるようになった。社会全体では、少子化、高齢化による人口減少による地域の過疎化。環境面では温暖化。それぞれ複合的に作用し、さまざまな問題に直面しています。


 生態系では、ニホンウナギは絶滅危惧種に指定され、稚魚であるシラスウナギの価格は、いまや1kg当たりトヨタのプリウス並みの相場になった。また、戦前は山の木を切って燃料にしていた人の暮らしが変わり、戦後の拡大造林のため木材は蓄積する一方、木材の輸入自由化により国産材はコスト高となり放置され続け、間伐など人の手が必要な人工林の宿命がおろそかにされた、樹木はマッチ棒状態でありながらメタボという状況に陥っている。ここに、温暖化が進行し、集中豪雨によって繰り返される土砂災害の悲劇。根の浅い木がごそっと崩れるような災害が多発しています。


 現在、大都市圏に移り住んだ人たちのライフスタイルを支えるエネルギーは、原油や天然ガスなどの輸入化石燃料でまかなわれています。電力需給を効率化する中、森があり、薪ある地方でさえ、自分たちでエネルギーをまかなうことなく、群馬県上野村においても、中東の石油に頼っている。電力を買うとは、そういうこと。


 また、食に目を向けるとカロリーベースの自給率は40%。輸入食料を自国で生産するときの水の必要量を推定するバーチャル・ウォーター(VW)という指標がありますが、日本は世界でトップのVWの受け皿となっている。国産の牛でも輸入飼料を与えていれば、牛肉1kgに対し、20,000倍の水が必要と言われ、いわば、食料の輸入は、形を変えて水を輸入していることにもなり、海外の水不足などの諸問題とも無関係ではいられません。

パリ協定とSDGs
 自然の循環系を顧みることなく、地下資源に依存した大量生産/大量消費という産業構造やライフスタイルは、Co2の上昇と地球の温暖化をもたらした。昨年発効したパリ協定では、先進国と発展途上国が力を合わせ、気温上昇を産業革命前に比べて2度より低く抑えようと目標を設定しています。先進国において、2013年を基準として、2030年では26%減、2050年に80%のCo2を減らそうという目標は、日本では閣議決定されましたが、とてつもなくハードルは高い。


 リーマンショックによる経済活動停滞で、Co2の排出量は下がったものの、東日本大震災により原発が止まり、Co2排出割合の多い石炭火力発電で補ってきており、Co2も一気に量が増えています。中央環境審議会によると、2050/80のためには、エネルギー消費を40%減らさないとならない。つまり、産業構造、ライフスタイル、社会のあり方が大きな変化を迫られている。もちろんCo2の排出を抑えた製品開発も織り込まれています。発電量の90%は、Co2が出ない方法へ移行させる。ポテンシャルを環境省で調べたら、再生エネルギーだけでいけるのではという、壮大な試算もあり得ます。たとえば北海道や東北などで産みだした風力発電エネルギーを地元の消費のみならず、都会にも移転する。実際には、電力のグリッドという問題もあるが、30年スパンで考えるような、中長期的視点がない限り、さまざまな部分解を集めただけでは、全体解にはなりません。目標とするのは、真に可能な循環共生社会です。


 言ってみれば、「森里川海」の循環系をベースにして、技術などもいろいろ盛り込み、2050年、2100年とその到達点に向かう気構えで、経済、社会、環境、すべて折り合いがついているところが、環境文明社会であり、循環共生型社会と言えます。技術開発としてのイノベーション。人の価値観、ライフスタイルが変わるというイノベーション。法律や制度など社会の枠組みが新しく変わる社会システムのイノベーション。この3つ、2050年に向けて、互いに入り子になって、ひたひたと同時進行するという発想で動いていきます。


 パリ協定で温暖化に対応する一方、国連では2015年、「2030年に持続可能な開発目標(SDGs/Sustainable Development Goals)」として、17の目標と169のターゲットが発表されました。先進国、発展途上国合わせて、これが世界の動きになっていきます。まさしく環境省の提言の内容です。

草の根運動としての「森里川海」プロジェクト
 このような文脈の中、昨年12月に勉強会方式でスタートした「つなげよう、支えよう、森里川海」プロジェクトを、環境省をあげて進めており、私は副チーム長、実質責任者として臨んでいます。環境省は上から目線ではなく、国民運動の後押しをしているという立場で、国民のみなさんに問題意識をもって、アクションを起こしてもらう。草の根運動の事務局という感じです。全国で集会を重ね、約4000人の意見をとり入れ、バックキャストティング・アプローチでターゲットを決めていく。


 目ざしているのは、「森里川海」という自然の恵みをひきだすことが可能になる社会です。再生エネルギーが使われ、少量多品種で高付加価値のブランドをつくり、地域ごとに個性ある風土づくりのために何が必要か。環境省としては、地域経済分析を行い、全国1700市町村ではどのような形でお金使えるのかなどの試算も提示して、各自治体での議論のベースを提供していきます。


 たとえば熊本県水俣市。公害で苦しんだところですが、市の総資産は、1000億円。風光明媚で風力と水力のポテンシャルが高い。今エネルギーの中心は電力で86億円が、域外に流出しています。再生エネルギーを政策化して、地産地消の形に変えていけば、お金がとどまり、雇用も確保できる。また、兵庫県豊岡市では、コウノトリを地域に呼び戻すために、地域のみんなが集まり、田んぼに農薬や化学肥料を使わず、コウノトリのエサ場を確保して、タニシやドジョウを呼び戻した。やってみたら、お米がおいしくなって、コウノトリ米として、いい価格で出回るようになった。環境と経済が共鳴する関係ができたのです。同じことが、環境省でトキの飼育繁殖や野生復帰を手掛けている佐渡でも言える。豊岡と同様に佐渡米はひじょうに高価格で市場に出ています。さらに、風景というテーマがあってもいいし、深刻なイノシシやシカなどの鳥獣被害には、ジビエとしてもっと活用しなければならない。また、自然資本を生かした健康づくりに着目した地域プログラムにも目を向けてほしい。このようなことは、各自治体で協議会のような形で、プログラムを決めていただく。


 ヒトや財力を投入していくための財源として、地方のみならず、都会の人にも等しく負担していただく税制が今年の年末には、明確になる方向です。いわば次世代へのお賽銭のような森林環境税として、透明性を確保した上で、国民1人あたり年数百円あまり、森に手をいれようという発想です。今まで自然の恵みというフローをもらいながら、自然のストックを食いつぶしてきた。元本割れしているのだから、元本を積み立てていくしかない。世代を超えた貯金のようなもの。ファンドを柔軟に立ち上げ、対応するためには、税制も絡むし、金融や官からの出資も不可欠です。健康医療開発機構の理事でもある吉澤保幸さんが方々飛び回って、タネを仕込んでくださったことが、徐々に具現化してきた段階です。

持続可能な文明社会に
 環境省としても、未来を見つめて全国的なプログラムを用意して、訴えていきたい。田舎でも都会でも、子どもが自然に触れ合うことができる「山ガキ」、「川ガキ」、「海ガキ」を育てていくようなライフスタイルも考えよう。健康や美容については、食品や化粧品など安心安全なオーガニック中心で、農薬、科学肥料を使わず、自然のよさを取り戻したものにしよう。環境政策以外の何ものでもありません。環境省では、10か所の実証地域で、3年間集中的に行われる協議会、ファンドなど地域のプログラムを昨年から後押しさせていただいている。地域目線を基本に進めているのですが、人間の技をかなぐり捨てた野生時代に戻ろうというのではなく、自然の循環共生系をより深く理解して、人間の叡知を投入する発想です。もちろんハイテクを駆使した技術をとり入れながら、社会システム、ライフスタイルのイノベーションをも包含した、真に持続可能な文明社会を提案していきます。環境がよくなれば、ひいては人々の身体、ライフスタイルも健全であり、「健康と医療」につながると考えています。

 

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