「親子三代にわたるブラジル コロニア医療への貢献」
森口エミリオ秀幸 先生(リオ・グランデ・ド・スール 連邦大学医学部内科学 教授)
2017年10月19日、30名の参加者を迎え、東京大学医科学研究所で開催しました。
広大なブラジル南部に点在する日系人一世の巡回診療は、祖父である細江静男医師が外務省の嘱託医としてブラジルに派遣され、現地の医師不足を痛感し、帰国を断り始められたものですが、父の森口幸雄医師が引き継ぎ、さらに森口先生が跡を受け、現在まで85年間欠かさず実施されているものです。移動距離は3,000km。日本列島の南北の長さに匹敵し、診療対象は400人におよび、時には終了が深夜になることも。
ブラジル南部はサンパウロなどの大都市や北部の地域に比べ、日本語による医療施設もありません。ポルトガル語でのコミュニケーションが困難な一世の方たちは70歳をこえ、認知症も心配な年代になってきました。毎年7‐8月に行われる巡回診療を心待ちにしています。森口先生は、9歳のときに一家で渡伯。経済的な負担や様々な困難を抱えながらも、たとえ患者さんが1人でも必要とされるなら、自分が診察を続けるしかないと、健康上のことのみだけでなく、患者さんの悩みにも耳を傾け、その姿勢は医療の原点とは何かと考えさせられます。
講演後のアンケートから、現地の日系人のお年寄りにとって、先生の診察が1年に1度の希望だということに感銘を受けた。ブラジル独特の食生活習慣による健康不安など初めて知った。患者さん一人ひとりを診ることが医療、という言葉が印象的。森口先生の活動を多くの人に知ってもらいたい。横浜市大と防衛医大の学生さんが毎年参加されていることに感動したなど、参加者の皆さんの熱い思いも伝わってきました。
巡回診療を手伝ってきた森口先生のお嬢様は、専攻していた建築学から医学部に再入学され、お父様の活動を受け継ぎ、巡回診療(を続けていかれるとのことです。